成長パロ第129話「ワールドワイド・ニンジャ」(2-2)
続きです。愈々このパートでビオラが登場しますよ!
海外のドラマとかで見る忍者って私らが普段想像するのとあまり変わらないような気もしますが、でも何処と無くアレンジが効きすぎた風に思えたりします…

2日目。興奮のあまりなかなか寝付けなかったというきり丸と亮をどうにかこうにか落ち着かせながら、一行は二人の両親が勤めているというその企業「メテオライトカンパニー」への訪問と相成った。他の生徒達が皆しゃっちょこばっている中、二人はもう一日千秋の思いが漸く昇華されるのが嬉しくて仕方が無いようだった。
「うわぁ~…もうすぐ会える…!」
やがてメテオライトカンパニーの正門が見えてきた。メテオライトとは「隕石」の意味で、日本でも名だたる外資系企業として知られている大手物流会社だ。しんべヱの実家・福富屋ホールディングスや団蔵の実家・加藤通運のお得意様で、他にも数多くの大口取引先を抱えているのだ。
お出迎えの重役に流暢な英語でご挨拶し、学園長は彼らを中へと案内した。じょろじょろとその後をついていく一同はまるで水鳥の雛のようだ。
応接室に通され、そこで暫し待つ。そして「お待たせしました」と入ってきたのは…
「…と、父ちゃん…!」
「よぉ、きり丸。元気そうで何よりだな」
そう、誰あろう、きり丸の父親だった。その隣には亮の父親もいて、一目見るなり亮も「父さんっ…!」と言葉を詰まらせた。
「久し振りだな亮!随分逞しくなったなぁ、え?友達も沢山出来て…」
『うわぁ~んっ、会いたかったよぉ~!!』
感情が一気に溢れ出し、二人はそれぞれの父親に飛びついて泣き崩れた。慌てて抱き起こし、しっかりと抱擁してよしよしと頭を撫でるきり丸の父と夏野氏。土井先生はそんな二人を微笑ましく見詰めながら、学園長に「再会できたのが余程嬉しいみたいですねぇ?」と囁いた。
「うむ、あの反応から察するに、二人にとって家族の存在はとても大切なもののようじゃな」
学園長も、教師陣も皆目を細めていた。
さて愈々オフィスに足を踏み入れたところで、今度は母親のお出迎えである。まずは全員にご挨拶し、次いでまたしても飛びついてきたきり丸と亮を抱き止め、「元気だった?学園生活はどう?」などとぽちぽち会話を交わす。そして夏野夫人は元3年生軍団に目を向け、にっこり微笑んで挨拶した。
「あなた達が亮のお友達ね?まずはnice to meet you!とご挨拶しておくべきだわ、うふふ」
「はー、やっぱりネイティブの発音は違うなぁ…」
一頻り再会を喜んだところで、愈々本題だ。邪魔にならないように隅っこに移動して、ビジネスメールの文面や取引先との電話での会話から、仕事に使える表現や改まった場での会話を学んだ。やがて次の予定の時間になったので、きり丸と亮はそれぞれの両親に縋り付き、名残惜しそうにしていた。
「今度は何時会える…?」
「さあ…何時になるかは分からないけど、有休が溜まったら会いに行きたいわね」
「お願い、出来ればなるべく早くね」
別れを惜しみつつ、二人は次に会えるときを楽しみにして、次の目的地へと向かった。その目的地とは現地の大学で、一行は比較文化学部の特別講義に招かれ、日本文化を教えることになっていた。学園長がツアーを組んだ時、ここの大学から「丁度良かった!今度特別講義で日本文化を教えることになってるんだ。良かったら是非来てくれないか」とオファーが来たのである。
忍術学園のものに負けず劣らずの広い講堂には既に比較文化学部在籍の学生達がうじゃうじゃ犇き合っていた。その只中から、サラサラの長い緑色の髪を靡かせ、一人の女子学生が近づいてきた。亮と同じ深緑の目が好奇心で輝いている。
「Hi!あなた達が日本から来た特別講師の皆さんね?」
「そうですよー。日本語お上手ですね」
「ええ、私は父がネイティブで母が日本人のハーフなの」
「What a coincidence!(=奇遇だな)俺もハーフなんだ、俺の場合は父さんが日本人で母さんがネイティブだけど。良かったら名前教えてくれないかな」
「私はビオラよ。あなたは?」
「俺は夏野亮、よろしくな」
ビオラと名乗るその少女は父親が現地人で母親が日本人という、亮とは逆のパターンのハーフだった。彼女の父親はメテオライトカンパニーとはまた違う貿易会社勤務である。
「お母様が日本人なら、日本文化にも理解があるから『色々教えてほしい!』って言われるんじゃないですか?」
「それはもう日常茶飯事よ~(笑)」
やがて特別講義が幕を開ける。講義担当の教授が「今日は日本から遥々客人をお招きした。盛大にお出迎えしたまえ」と紹介すると途端に拍手の嵐が一行を襲った。
「えー、Hello, everybody...いや、ここは日本語で挨拶すべきかのう…。やあ諸君、今日はお招きいただきありがとう…」
学園長の挨拶に学生達は「うおぉー!!生粋の日本人による日本語だー!!日本語自体はビオラから教えてもらってるけど!!」とどよめいた。
「唐突じゃが、諸君は忍者の存在はご存知かな?」
『Yes, we do!勿論知ってますー!』
「アレでしょう、闇夜に紛れて敵を斬ったり、煙幕を張って姿を消したりする!」
「無論その通りじゃ。しかし、忍者というと大抵、普段からああいう装束で行動しているイメージがあるんじゃないかの?」
「え、えぇ、そう言われると…」
「忍者は普段一般人に紛れ込んでおるんじゃ。スパイ活動が主体じゃから、如何にして社会に溶け込めるかが重要なんじゃよ」
「Oh...つまりJapanese traditional spyですか」
「その通り。さて…わしらを見ても普通の人間にしか見えんじゃろう?」
「ええ、大規模な学校の教授の皆さんと生徒さん達にしか」
「聞いて驚きたまえ。実はわしらこそが、現代に生きる忍者なんじゃよ」
その瞬間、講堂は一瞬水を打ったように静まり返った。刹那、「えぇぇぇぇ――――!!?;;;」と驚嘆の声が空間を埋め尽くした。教壇に一番近い席にいた一行に、学生達が「Unbelievable!!嘘やろー!?マジで!?お宅らマジで忍者!?;;」と問うてみる。
「そうだよー。驚いた?」
『驚いた、驚いたよ!!;;;』
それから教師陣による忍者の歴史の解説、そして生徒一同による模範演技に、学生達は驚愕と感動に打たれて暫く言葉が出なかった。
「すげぇ…これが本当の忍術か…!」
「以前母さんの実家にお邪魔させてもらった時、歴史資料館に行ったことがあるんだけど、その時に忍者に関する資料を見たことがあるの。それを今この場で、生で見られるなんて…fantasticだわ!」
ビオラは興奮で目を輝かせ、見入っていた。
「どうじゃね、これで忍者の本当の姿が分かったかの?」
『分かりました、物凄~~~くよく分かりました!!』
「じゃがわしらは、余計諸君の混乱を招いてしまって悪いが、よく漫画やゲームで見るような、どちらかというと魔法に近い忍術も心得ておるんじゃ。日本文化ということで、日本の漫画も知っておるな?」
「はい、よく読んでます!一番のfavoriteはNARUTOです!」
「私もそれ大好きよ、この前ビオラから貸してもらったの!面白かったわー!」
「面白かった?喜んでもらえて嬉しいわ」
「そのNARUTOに出てくる術の数々も、わしらは身に着けておる。じゃが、これは補助的なもので、(メタな話になるが)わしらはあくまでもリアリティを追求した忍者じゃからな」
「Reality、ですか…流石ですね、強い拘りを感じます…」
こうして特別講義も恙無く、学生達からやんややんやのスタンディングオベーションを受けながら終了した。まだ興奮冷めやらぬ様子の学生達がじょろじょろ捌けていく中、ビオラが息を弾ませながら駆け寄ってきて、こう言った。
「ねぇねぇ、あなた達の通う忍術学園ってどんなところ?今度父さんが有休を取った時、是非お邪魔してみたいんだけど!」
「えっ、忍術学園か?そりゃもういいところさ!入学すれば皆家族も同然だよ、楽しみながら忍術が学べるし!」
「是非おいでよ、皆への最高の土産話が出来るからさww君が忍術を会得すれば、世界に羽ばたく忍者として有名になるかもよ!w」
「きゃーっ、今からワクワクしてきちゃったー!」

こうしてまた新しい思い出が出来た。その後の日程も皆思い思いに楽しみ、心のアルバムを一回り分厚くして一行は帰路に着いた。
「それにしてもビオラ、本当に日本のことが好きなんだな。忍術学園にお邪魔したい、なんて言ってたし」
「ああ、ほんっとに目がキラキラしてたよな!父ちゃん達も元気そうだったし…今度会えるのは何時だろう…」
「こっちは生活習慣の違いにカルチャーショック受けたよ~」
わいわい言いながら、皆はまだ海外に思いを馳せていた。
 
やっぱり家族はいいですね~
佳奈美です。
♀友一シリーズ更新しました。
明日で完結ですよ。
楽しみにしてくださいね。

今週の小説昨日今日と読みました。
海外での彼らは相変わらずにぎやかで国内旅行と同じ感覚で楽しんでいましたね。
そしてきり丸の両親と亮の両親が登場してと・・・
ここでのきり丸と亮の実家って資産家っぽいですね。
海外での仕事が主だし互いの両親が一流企業を勤めているし・・・
そしてビオラの登場もよかったです。
今週2日続けて楽しみました。
来週はタソガレドキとドクササコの戦いですね。
戦いといってもギャクなんだけど・・・どんなギャクが出てくるのでしょうかね。
ほのぼのが一番やりやすいです
コメありがとうございます。
わーぉ!明日で友一♀も完結ですか!
楽しみにさせていただきます^^

ええ、やっぱり私はこういうほのぼのネタが一番やりやすいんです…。
きり丸ん家が資産家…しんべヱとかユキちゃんとこには負けるけどね(笑)
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secret


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