リク消化、今回は「忍術学園一同の海外旅行」にして、ビオラお披露目回でもあります。
折角なのできり丸&亮のご両親もちょろっと登場させてます。彼らの勤務する会社は外資系企業なのよ。
海外旅行なんて中学の修学旅行でニュージーランド行ったっきりだなぁ…
長くなったんで前後に分割してお送りします。
今回の舞台となる国が何処かは断定できませんが、恐らく英国かアメリカかと。そんな感じでイメージしてください。
学園長はBSで海外のニュースを見ていた。そこで「忍たま諸君には世界をもっと知っておく必要がある」と思いつき、海外旅行を計画した。それを聞き、6年は組は沸き立った。
「海外旅行か。きり丸、もしかしたらお前と亮のご両親に会えるかもしれないぞ」
「ほんとですかっ!?わはーぃ、久々に生で父ちゃんと母ちゃんに会えるー!!」
両親に会えるかもしれないと聞き、きり丸はまだ決まった訳でもないのに大喜びしていた。乱太郎としんべヱは「はしゃぎすぎだよ~」と苦笑したが、圭介は「いいじゃねぇか、やっぱり生で会った方が、傍にいるって実感が湧くんだしよ」ときり丸の気持ちを汲んでやった。
当然それは亮とて同じであり、懐かしい両親の笑顔を思い浮かべて何処か切ない溜め息をついていた。孫兵は「ご両親に会うのが相当楽しみなようだね…」と目を瞬かせた。
「ああ、元気な姿を見せてほしいよやっぱり」
全員パスポートを取得し、予防接種もしっかり受けて、語学の勉強にも力を入れた。座学がさほど得意ではない玲次は勿論、戦国時代から脳みそ筋肉と評されていた小平太も頭から煙を出しながら、ラジオから流れる「んhk基礎英語」に全身を耳にして聴き入り、同番組のテキストと睨めっこしていた。
「長次は昔から諸外国の言語に堪能だったけど、小平太はそれとはえらい違いだねぇ…流石伝説の0点チャンピオンだと思わざるを得ないww」
「書物の賢者だからな、長次は。きり丸は同委員会ということもあるし、何より亮という最大の恩恵がいることだし…それにしてもあんな小平太の顔、久々に見たぞwww」
「う~…何だよ過去完了とかnexusの関係って…源堂~、助けてくれ~;;;」
「あーもう、玲次ったらほんとに覚えるのが苦手なんだから…」
玲次は半泣きで源堂に縋り、分かりやすく教えてもらっていた。陽大もまた、分からない単元があるという同級生に縋られていた。
何やかやもちゃもちゃバタバタしながら、出立の準備は着々と進んでいた。きり丸と亮は窓の外に浮かぶ三日月を見上げながら、こんな会話をしていた。
「成長した俺達を見たら、父ちゃん達きっと驚くだろうな~」
「ああ、そして元気そうで何よりだって抱き締めてくれたら…」
その目が輝いている理由は、月明かりだけではなかった。
そして愈々当日。関西国際空港に突如大挙して押し寄せた忍者の集団に、出国する人も帰国してきた人も関係者も皆驚いた。手荷物検査も無事に通過し(武器は持ち込めないので学園に置いていったのだ)、初めて乗る飛行機に生徒は全員大はしゃぎである。
シートベルトを締めて、やがて離陸。それから目的地に到着するまでの間、皆は機内でお喋りに花を咲かせるやら頭まで毛布を被って寝るやら。伊作達保健委員一同は「酔ったら無理せず申告するように!」と事前に言っておいたが、今のところくたばった者は出ていないようだ。
飛行機は順調に飛行を続け、やがて目的地上空に到達すると同時に着陸態勢に入った。吸い込まれるようにぐんぐん高度を下げながら滑走路に向かい、軽い振動と共に無事着陸する。
がやがや言いながら到着ロビーに向かうと、そこはもう現地の言葉で満たされていた。乱太郎はしみじみと呟いた。
「ああ…外国だなぁ…」
到着した瞬間から1日目の日程が始まる。まずはその国の名所を一通り巡り、それから宿泊するホテルに向かう。
バスの車窓から見える町並みに生徒は勿論、1年担任6人も年甲斐も無くはしゃいでいる。まだまだ気分は忍たま時代のままなのだ。
「あ、あれ、テレビで見たことあるー!」
「あのお菓子の会社だ!ここの工場で作られてるんだね」
「教科書に載ってたのと同じだー!」
知的好奇心を擽られて、1年生軍団は車窓に貼り付いて離れようとしなかった。留三郎はそんな彼らを窘めたが、何処か嬉しそうだ。
「あーもう、五月蝿いぞお前ら!w…でもまあ、一応授業の復習になってるから今回は許すか…」
ホテルは市街地に程近い場所の一流五つ星ホテルであり、高級感漂うものだ。ロビーに集合し、教師陣は明日の日程を説明した。
「明日はビジネスで使える英会話を学ぶため、会社訪問するぞ。失礼の無いようにな!」
『はーい!』
「それで、何処の企業なんですか?」
きり丸が期待半分不安半分といった様子で尋ねると、土井先生はふっ、と微笑んで、言った。
「喜べきり丸。お前の、そして亮のご両親の会社だぞ」
それを聞き、二人は信じられない、という顔で目を瞬かせた。そして次の瞬間、じわじわと湧き上がる歓喜に震え、そして「やったー!!」と欣喜雀躍狂喜乱舞。
「良かったね、きり丸!これで悲願が果たせるよ!」
「うん、ほんとに良かった…!先生、ありがとうございます!」
目に涙を浮かべて、きり丸と亮は土井先生に抱きついた。穏やかに微笑みながら、土井先生がよしよし、と二人の頭を撫でる。
「嬉しいか。だが、喜ばしい事実はこれだけじゃないんだ」
「えっ?これだけじゃない、って…?」
「実はな、このホテルはお前達のご両親の会社の系列グループが経営してるんだよ」
『え、えぇぇぇ――――!?;』
意外な事実が判明して、きり丸と亮は勿論、生徒全員と1年担任軍団も驚いた。
さて、このホテルは快適性をとことん追求したと銘打っているだけあって、どの部屋も広々としており見晴らしが良い。バリアフリーということで広い廊下には手すりがついているし、避難経路やトイレの位置もピクトサインで表示していて実に分かりやすい。
最上階のスイートルームは全部で10室あり(どんだけ広いんだ)、その全てから美しい夜景を望める。兵助と八左ヱ門は窓に貼り付き、何時ぞやのクリスマスを思い出していた。それは一左ヱ門と佳音も同じで、きゃっきゃと無邪気にはしゃぐ佳音を眺めて一左ヱ門がニタニタしていた。それを見て八左ヱ門が「兄さーん、顔が崩れてるぞー」と野次を飛ばした。
「やれやれ、一左ヱ門さんったら相変わらずだねぇ」
1部屋に4台ずつある天蓋付きベッドは全てキングサイズで、二人が並んで寝転んでもまだ余裕があるくらいだ。おまけに低反発素材でできており、綿雲に乗ってそのまま包み込まれるような柔らかさがある。伊作はそのうちの1つに寝そべりながら、この光景に苦笑していた。
「まあいいじゃないか。…それにしても抜群の寝心地だな、このベッド…この感覚を覚えたら、もう学園の布団では満足に眠れないかもな」
仙蔵はうっとりとしながら伊作を抱き寄せ、「天国はこの世にもあるものなんだな…」と呟いて淡く口付け、徐に天蓋を閉めた。